澪くんは私の事が知りたい
「……はい?」
と、少し理解が追いつけない質問に対し間抜けな声が漏れてしまった。
「えっと、つまりはどうやって私のことを好きにさせたって事?」
「あぁ」
と、ここまで来て聞きたかったのはそういう事だったらしくて、そんなとっぴすぎる質問に肩を落とした。
「聞いてる?」
「き、聞いてるよ」
聞いてるけど、その質問の答えを聞いてなにがあるの?っと、そんな奇抜な質問に少々戸惑ってしまう。
「それはどういった思惑で質問したの?」
「思惑?単純に気になるからだけど」
「……」
邪心の欠片もない彼の無愛想な表情に、何か企んで質問したのでは?という私の考えが汚れてみえて胸が少し痛んだ。
「じゃ、じゃあそんなことなんで
気になるの、と言い終わる前に彼に言葉を遮られる。
「あの女たらしのクソ兄貴が初めて本気に好きになった人があんただから」
そんなの
「う、そ……」
「ほんと。その証拠にあんたと付き合った瞬間に女の関係全部切ってたしな」
「蓮夜が女たらしとか有り得ない......」
「え、突っ込むとこそこ?」
そりゃそうだ。あの蓮夜が女たらしなんて考えたことも無いしそういった女の影も無かったのだから。
それに━━━━━━━
「どうやって落としたのかなんて私だって分かんないよ。顔が好みとは言われていたけど......」
「ふーん」
と、ジリジリと間近に迫ってきた澪くんが目を細め怪訝深そうに、じっと見下ろしてくる。
それに負けじと必然的に上目遣いになりながら視線を送り返す。
「興味深いな」
獲物を狩るような鋭い目つきに変わって
そして私が獲物だと言わんばかりにその目はギラギラと私を捉えて逃がさない。
「あんたのこと教えてよ」
季節は春━━━━━━━━━━━━━━
春には、別れの季節、出会いの季節、新しい季節、人によって様々な異なったイメージがあるだろう。
そして私の春は出会いの季節となり、全てはこの男、九十九 澪から春が始まった。