澪くんは私の事が知りたい
「ワナ怪我はない?」
「大丈夫だよ久遠!久遠も澪くんもありがとう!」
「いや俺は別に何も......」
そうして穏便に済んだ所で、私は身を潜めこの場から去ろうとしていた。
逃げるならワナに意識が向いている今しかない!ワナには後から謝ろう、と三人の輪から外れ背を向けた時だった。
「なぁ」
その声にビクッと肩が上がった。
振り向かなくても声で察する。
今私の背後に立ってるのは明らかに九十九澪って事を。
私は絶対振り向かない!
そうして何秒か経っても背中を向けたままの私に追い討ちをかけるように言い放った。
「あんた、兄貴の元カノの"彩" だよな」
ば、バレてたーーー!やっぱりバレてたー!!しかも名前覚えられてるー!!
「えーっと私が貴方のお兄さんの元カノ?そんな夢みたいなことある訳ないよ!冗談言ってー」
「じゃあ兄貴と写ってるこの写真の女はあんたじゃないんだ」
「え?」
写真…?と、思わず振り返り、九十九澪の手元を見るが写真らしきものは持っていなかった。
「やっと振り向いた」
つまり元から写真などなく、この男にはめられた、と。
ちょっとムカつくが、今はそんな事はいい。
私の狙いはあくまでも蓮夜の元カノじゃ無いことを澪くんの頭に叩き込むことだから
「澪くん、さっきから言ってるけどほんとに私蓮夜くんの元カノじゃないから。それに私の名前は彩じゃないしね」
「じゃあ名前は?」
「え、あーっと、い、いろ子!だよ!」
いろ子って何!誰!ネーミングセンスの無さよ!っと自分で自分にツッコミを入れる。
「いーろは!何してんの?」
「わ、ワナ、何してるって…特に何も…あっ」
「やっぱ名前彩じゃん」
なんて澪くんが涼しげな表情で私を見てくる。
ワナ、タイミングが悪いよ!
と、隠しようがない事実にどうすることも出来ず、口を閉じてしまった。