【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい
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ぐつぐつとお鍋が揺れる。香ばしい匂いを部屋いっぱいに漂わせているそれは、シチューだ。
今日作シチューはいつものひとり分ではない。ふたり分だ。多めに作って、お隣さんである先生に持っていこうと思ったのだ。
玄関の前に座り耳をそばだてていると、19時を過ぎた頃、隣の部屋に動きがあった。ガチャリと鍵とドアが開く音がした。先生が帰宅したらしい。
わたしは急いで弱火にかけておいたシチューをタッパーによそい、それを持って先生の部屋のチャイムを鳴らす。急いで髪が乱れていないか整えていると、少ししてガチャリと音をたててドアが開いた。ドアの向こうから顔を見せたのは、先生だ。
「先生、突然すいません。シチューを作ったんですけど、ちょっと作りすぎちゃって……。もしよかったら、食べてもらえません?」
作りすぎたというのは嘘だ。正真正銘、先生のために作ったのだけど、本当のことを言うのは気恥ずかしくて出まかせの嘘をつく。