【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい



「なにしてんの、わたしのばかーっ!」

 近所の公園のドーム型の遊具の中、わたしの絶叫が響き渡った。

 膝を抱えて座り、取り返しのつかないことをしてしまったと今更気づいて頭を抱える。

「言っちゃった……。先生、引いたよね……」

 つい勢い余って、言うつもりのなかった本心を言ってしまった。できることなら時間を巻き戻してあの時の自分の口を塞ぎたい。
 どんな顔して先生に会えばいいのか分からない。

「寒い……」

 情けない弱音は、激しく打ちつける雨音にあっという間にかき消された。
 マンションを飛び出して少し経った頃降ってきた雨は、ますますその勢いを増している。天気予報では一日晴れだと言っていたのに。天気予報士のお兄さんを心の中でそっと恨む。

 ついていない日はとことんだめだ。
 雨が降ってすぐここに駆け込んだものの、雨にさらされた体が、ひんやりとした風に冷やされる。膝に額を押し当て、びしょびしょになった自分の腕を抱く。
 濡れた前髪から水滴が滴り、寒さに身を震わせた時。

「――見つけた」

 一筋の声が、雨音にかき消されずに耳に届いた。
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