猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「そういえば、私が京都だとすぐにわかったんですか?探させてしまいましたか?」

照れ隠しで話をそらすと、三実さんは優しく微笑んだまま言う。

「幾子の持ち物のいくつかにGPSが」
「恐ろしいことをさらっとしないでください」
「駄目だったか。役に立ったんだが」
「そういうところがストーカー的なんです。反省してください」

やましいことなんてないけれど、どこまで私を見張れば気が済むのかしら。呆れていると、三実さんが私の手を強く握り直して言う。

「昨夜は、強引なことをしてすまない。嫌だっただろう」
「いえ……嫌ではなくて」

話がもとに戻り、私は狼狽して口ごもる。

「目覚めたら幾子の姿がなくて慌てた。怖くなった。やっと幾子を手に入れて夢見心地だったのに、天国から地獄だと思った。幾子を手に入れたんじゃなくて奪ってしまったのだとその時に気づいたよ。本当にすまない」

嫌じゃなかった。受けれいてくれと言われ受け入れたくなった。だって、私は気付いてしまった。
あの瞬間、すべてがわかった。私はこの人が好きなのだ。

「昨夜のことは、えっと合意だと、思ってくださっていいので」

はっきり言わなくちゃ、私もあなたが好きだと。抱き合えたことも嬉しかったと。

「未経験で、喧嘩の延長で、あんなことになってしまって……いたたまれなくて、でも三実さんと、そういうことをしたくないというわけでは……」

駄目だ。なんで私は言い回しばかり考えてストレートに発言できないんだろう。好きというたったひと言が出てこない。
三実さんが微笑んだ。

「幾子、気遣ってくれてありがとう」

気遣ったんじゃなくて!
だけど、私には『好き』と言えない理由がなんとなくわかってきた。まだ私にも自信がないからなのだ。
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