猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
初恋だ。嫁いだ夫が初恋の人なので、恋という概念に触れたのも今が最初。この気持ちが本当に恋なのかわからない。志信さんが現れてあせっているだけなのかもしれないと思うと、簡単に好きだと言えない。
愛しているのは間違いない。この人を愛しく思っている。
だけど、家族愛に近い気もするし、言葉にしたら淡雪のように儚く消えてしまいそうな気もする。

「幾子をこれ以上傷つけたくない。許してくれるなら、新たな気持ちでおまえと接していきたい。そのために色々と考えていることがある」

三実さんは三実さんで決めたことがあるようだ。
やがて新幹線は東京駅へ。タクシーに乗って金剛家に戻る。
今日は仕事が休みの日だったけれど、明日は出勤。結果的に一日の家出で戻ってきたおかげで麻生さん夫妻に迷惑をかけずに済んだ。

そういえば、今日から信士くんは夏休みじゃないか。今日はほったらかして可哀想なことをした。昨日注文したビニールプールと水鉄砲は届いているだろうか。明日は仕事から帰ってすぐにそれを膨らませてあげよう。
タクシーは金剛家に向かう。大通りを右折……じゃなくて左折?
三実さんは、何か用事があるのだろうか。
タクシーはすぐに停車した。大きなマンションの前だ。このあたりは金剛家から五分くらい歩いた立地だけど。
< 128 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop