猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「わかりました。じゃあ、外側からちらっと覗いたら、離れに戻ります。曽根崎さん、ありがとうございました」
「左様ですか。奥様、敷地の外へお出かけの際は私か甲本におっしゃってくださいませね。奥様がお買い物やお友達と会うことに制限をかけてはいけないと三実様より申しつかっておりますので」
「はい、そうします」
曽根崎さんが去っていく後ろ姿を見送り、私は養鶏場にそろりと近づく。外側からと言ったものの、ぜひ中を見たい。鶏たちを見たい。
背の高い柵が張り巡らされた敷地には鶏舎があり、外を鶏たちが駆けまわっている。おお、覗かなくても見られた。
柵にへばりついていたら、突如後ろから呼ばれた。
「おい」
「ひゃ、ひゃい!」
思わず変な声で返事してしまった。私を呼んだのは鶏舎の裏木戸から出てきた老人だ。鶏を視界に入れていたので、声をかけられるまで気づかなかった。
「あんた、誰だい?」
ええと、私は三実さんの奥さんで……。言葉を選んでいると、ご老人に先に言い当てられた。
「若奥様かい。三実さんのお嫁様」
「あ、はい。そうです。幾子と申します」
柵から離れ、お辞儀をすると、ご老人は柵の入り口をそっと開け鶏が出ないようにしつつ手招きする。そうされたら入る以外の選択肢はない。結局柵の中に入れてもらった。
「左様ですか。奥様、敷地の外へお出かけの際は私か甲本におっしゃってくださいませね。奥様がお買い物やお友達と会うことに制限をかけてはいけないと三実様より申しつかっておりますので」
「はい、そうします」
曽根崎さんが去っていく後ろ姿を見送り、私は養鶏場にそろりと近づく。外側からと言ったものの、ぜひ中を見たい。鶏たちを見たい。
背の高い柵が張り巡らされた敷地には鶏舎があり、外を鶏たちが駆けまわっている。おお、覗かなくても見られた。
柵にへばりついていたら、突如後ろから呼ばれた。
「おい」
「ひゃ、ひゃい!」
思わず変な声で返事してしまった。私を呼んだのは鶏舎の裏木戸から出てきた老人だ。鶏を視界に入れていたので、声をかけられるまで気づかなかった。
「あんた、誰だい?」
ええと、私は三実さんの奥さんで……。言葉を選んでいると、ご老人に先に言い当てられた。
「若奥様かい。三実さんのお嫁様」
「あ、はい。そうです。幾子と申します」
柵から離れ、お辞儀をすると、ご老人は柵の入り口をそっと開け鶏が出ないようにしつつ手招きする。そうされたら入る以外の選択肢はない。結局柵の中に入れてもらった。