猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
しかし、私もそこまで言われて拒否することができない。

「三実さんのお仕事の都合がつくようでしたら、一緒に行きましょう。三人でお昼を食べるのはどうです?」

ぱっと笑顔になって答えると、三実さんも笑顔で返す。

「それはいい。お店は俺の方で予約してしまって構わないか?」
「ありがとうございます。嬉しいです」

笑顔で御礼を言ってみたけれど、すごく不自然なやりとりだと思った。上滑りしているような会話を気持ち悪く感じつつ、夕食を終える。

「今夜も先に眠っていてくれ。秘書から連絡が来ているから少し出てくるよ」

三実さんは夕食後、すぐに席を立ってしまった。私は笑顔で見送りながら、彼の忙しさに一転申し訳ない気持ちになった。

一緒に暮らして二週間、ほとんど家にいないし、眠るのも私よりずっと後。それなのに、私の家族に礼を尽くそうとしてくれ、私を尊重して初日以降強引な態度は一切してこない。
お風呂からあがり、三実さんにプレゼントされたモコモコのルームウェアを着てソファに腰かける。

三実さんは紳士的だ。たまに感じる彼に対する恐怖のようなものは私の被害妄想かもしれない。獣のような迫力だって、男性に免疫のない私が過剰に怯えているだけ。
さっきもなんだか笑顔や会話がうすら寒いように感じたけれど、時間が経ってみれば私が考え過ぎなのかもと思う。

きっと私の気持ちのせい。諭にこの家のことや暮らしのことをあるがままに報告しようと思っていたのに、三実さんがいては遠慮しいしいになってしまう。それが残念だっただけ。
私の勝手な気持ちで三実さんを悪者にしようとするのはやめよう。
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