猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
質問に私はどきんと心臓を高鳴らせた。実はこれが初めてじゃない。
一緒に眠るようになって、時折こうしてキスを求められるのだ。

「……はい」

嫌じゃない。三実さんは私の夫だし、彼はたぶんそれ以上のことをしたいのだ。そこをぐっと我慢してこう言ってくれている。気持ちに応えてあげたい。

私の消え入りそうな返事に、三実さんが上半身を起こす。覆いかぶさるように私の顔の横に手がつかれる。三実さんの整ったはっきりした顔が目の前にある。
愛おしそうに目を細める三実さんを見ていると、胸がきゅうっと締め付けられるようだ。苦しいんじゃない。くすぐったく疼く。
顔が近づいてくるので、目をつむった。心臓がはじけ飛びそうなほどドクドク鳴り響く。何度キスしても慣れないし、恥ずかしい。

唇は柔く重なって離れた。私は緊張でぎゅっと目を閉じていたけれど、優しくて温かな感触はいつもちゃんと感じている。
唇が離れ、おそるおそる目を開くと、幸せそうに微笑む三実さんがいた。

「幾子、愛してる」

言葉にならず、私は布団に顔を隠した。反則だ。三実さんのそういう顔は反則。
優しい笑顔にほのかに感じるのは欲望。獣の性を一生懸命抑え込んで私を見つめる彼はどうしようもなくセクシーだ。それ以外の言葉が見つからない。

三実さんと同じ量の愛情を返せる自信がない私は、いつも答えに悩んでしまう。
布団の内側で悶々と返す言葉を選んでいると、三実さんが上から退いた気配を感じる。

「おやすみ」
「はい、おやすみなさい」

三実さんはそれ以上触れてはこず、私はいつまでも布団の内側で悩むのだった。
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