猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「以前も言ったが幾子との結婚はおまえが16歳の時に正式に申し込んだ。それを断ったのはおまえの親父さんだ」
「当時はまだ後継者にする腹積もりだったのかもしれません」
「果たしてそうだろうか」

三実さんは何気ないふうに言う。

「親心というものは、なってみないとわからない部分もある。俺や幾子では親父さんの気持ちは想像の域を出ない」

父が私に何か期待していたとか、愛着があったようには到底思えない。だけど、それ自体は確かに私の想像でしかない。

「だから、俺と幾子は早く子づくりをして、人の親になってみるのはどうだろう」

重たくなった空気をクラッシュするように、まったく空気を読まず提案してくる三実さん。私はふき出してしまった。

「もう、またそこに至るんですか?」
「そうだ!幾子、今すぐ抱きたい」
「お店の中です!お静かに!」

もしかして、三実さんなりに気遣ってくれたのかなと思うと嬉しかった。



レストランの駐車場には海岸線まで降りられる階段がついている。
岩場の中にちょこんとある海岸で、このレストランを使う客以外はあること自体知らないそうだ。ちょっとしたプライベートビーチみたい。

パンプスを脱いで、素足を波にひたすと心地よい。海なんてどのくらいぶりだろう。砂の感触も潮の匂いも夏そのものだ。
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