猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「私は後悔してるのよ。あんな家に嫁がせて。すべては幾子の父親が悪いんだけれどね!」
母ははあと深いため息をつく。横から君島のおじさんが口を挟む。
「でも幾子ちゃんがお嫁に入ったの、金剛家だろう。本家の三男でグループ会社を経営してるって。良いおうちにお嫁入りできて何不自由なく暮らせるでしょう」
「お金があるから幸せってわけじゃないわ」
実体験を滲ませて母は私をきっと見つめる。
「あなたの旦那ね、色々調べたけれど十年近く前に婚約者がいたのよ。幼馴染の女と婚約してたんですって」
植松さんからもちらっと聞いた話だ。どきりとする。
「でも、その女を追いだしたらしいのよ。人間的に問題のある男なんじゃないかしら」
祖父が母をたしなめるように口を開く。
「おいおい、変な言いがかりをつけるんじゃない。もう亡くなったが、金剛の当代の奥方は私たちも知ってるよ。そっちのご実家と付き合いがあるからね。その息子さんもひとり会ったことがあるが、格別変わった男じゃなかったぞ」
八年前のピアノ発表会の話だ。私と三実さんが出会うきっかけになった。私はろくに覚えていなくても、祖父母にとってはほんの数年前、自分たち主催のイベントだし覚えているだろう。
しかし、母はくわっと表情を鬼のようにゆがめた。
「そんな不確かな情報、当てにならないわよ!」
いやいや、母の情報も充分不確かな気がするんですけれど。私が黙ってお茶をすすると、母は思わぬことを言いだした。
「そしてね、隠し子がいるらしいのよ」
とっておきと言わんばかりのドヤ顔で言う。
さすがに私も冷静に聞いていられなくなった。
隠し子?三実さんに?
母ははあと深いため息をつく。横から君島のおじさんが口を挟む。
「でも幾子ちゃんがお嫁に入ったの、金剛家だろう。本家の三男でグループ会社を経営してるって。良いおうちにお嫁入りできて何不自由なく暮らせるでしょう」
「お金があるから幸せってわけじゃないわ」
実体験を滲ませて母は私をきっと見つめる。
「あなたの旦那ね、色々調べたけれど十年近く前に婚約者がいたのよ。幼馴染の女と婚約してたんですって」
植松さんからもちらっと聞いた話だ。どきりとする。
「でも、その女を追いだしたらしいのよ。人間的に問題のある男なんじゃないかしら」
祖父が母をたしなめるように口を開く。
「おいおい、変な言いがかりをつけるんじゃない。もう亡くなったが、金剛の当代の奥方は私たちも知ってるよ。そっちのご実家と付き合いがあるからね。その息子さんもひとり会ったことがあるが、格別変わった男じゃなかったぞ」
八年前のピアノ発表会の話だ。私と三実さんが出会うきっかけになった。私はろくに覚えていなくても、祖父母にとってはほんの数年前、自分たち主催のイベントだし覚えているだろう。
しかし、母はくわっと表情を鬼のようにゆがめた。
「そんな不確かな情報、当てにならないわよ!」
いやいや、母の情報も充分不確かな気がするんですけれど。私が黙ってお茶をすすると、母は思わぬことを言いだした。
「そしてね、隠し子がいるらしいのよ」
とっておきと言わんばかりのドヤ顔で言う。
さすがに私も冷静に聞いていられなくなった。
隠し子?三実さんに?