聖なる夜の天使
家に閉じこもりがちの巳冬を、真琴は積極的に外に連れ出してくれた。夏場は家の中で過ごすことが多いが、それでも人を集めて巳冬が一人でいることは少なく、楽しかった。

そんなある日、二人きりで遊園地に行った時に真琴から言われたのだ。

「あたし、アンタのこと好き」

巳冬は泣きそうになるほど嬉しくて、今すぐに真琴を抱きしめたくなった。しかし、「ごめん」と返したのだ。

巳冬と一緒にいれば、真琴まで偏見の目で見られるかもしれない。好きな人にそんな辛い思いを強いたくなかった。悲しい思いを堪え、巳冬はそう言った。

「あたし、諦めが悪い女なの。アンタのことはずっと好きでいるから」

真琴は笑ってそう返した。それが嬉しかったなど、巳冬は口に出すことはできない。真琴が気持ちを捨てていないのと同じで、巳冬も真琴が好きだ。

そして季節は巡って今になる。

「アンタご飯食べてないでしょ?」

真琴はそう言い、勝手に冷蔵庫を開けて材料を取り出す。巳冬は文句を言わず、「手伝おうか?」と声をかけた。真琴は一度行動を始めたらもう止まらない。
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