極上パイロットが愛妻にご所望です
「おはよう。砂羽」

「桜宮さん、おはようございます。今、何時……?」

 照れを隠しながら、すぐ近くにある美麗な顔を見ないようにして聞く。

 睡眠時間、トータル二時間ほどだろう。なのに、桜宮さんはたっぷり眠ったようにスッキリした顔をしている。

 彼に引き換え、私はきっと腫れぼったい目になって疲れた顔をしているに違いない。

「八時過ぎ。なあ? 砂羽。まだ俺のことを桜宮さんって呼ぶのか?」

「でも……」

「一線引かれているみたいで嫌だな。朝陽って呼べよ。もう俺に愛されたんだし」

「……あ……朝陽」

 呼んでみると恥ずかしくて、顔を布団で隠したくなったところを抱きしめられる。

「もう一度呼んで」

「朝陽……」

 嬉しそうに懇願され、私は再び彼の名前を呼んだ。

「また砂羽が欲しくなる。君が腕の中にいるせいで、おちおち寝ていられなくて目が覚めたんだ」

 朝から甘い言葉を紡いでくれる彼に、愛しい気持ちがあふれ出てくる。

「だけど、超絶に腹が減った。朝食を食べに行かないか? 食べて戻ってきてから休もう」

 確かに私もお腹が減っている。今にもぐううと不満の音をたてそう。できることなら、そんな音は彼に聞かせたくない。

 私はコクッと頷き、かけ布団を胸のところで押さえながら、上体を起こした。

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