極上パイロットが愛妻にご所望です
「はあ~、生き返る。友莉子、すごく似合っているわ」

 友莉子はノースリーブの黒のブラウスに白のワイドパンツで、仕事ができる女の代名詞のように見える。

 私たち三人で食事をするのは春以来で、積もり積もった話は尽きない。

 飲み物がなくなったところで、十六時からオープンのスペインバルへ向かった。
 

 明日も休みのふたりは赤ワインを選び、遅番の私は最初の一杯だけを同じものにして、それ以降はウーロン茶にする。

 明日は遅番だから、今日ゆっくりできるのが嬉しい。

 スペインバル特有のひと口で食べられるいろいろなピンチョスなどの料理が、丸テーブルに並ぶ。

「かんぱーい」

 私たちは乾杯をして、赤ワインを口にしてから、タコとプチトマトのピンチョスをパクッと食べる。

「砂羽、王子とどうなってるの?」

 ふいに久美が、タコを口の中に入れてモゴモゴしている私に質問を投げかけた。朝陽と付き合い始めて二ヵ月とちょっと。久美にも友莉子にも話していなかった。

「ねえ、王子って誰?」

 友莉子が不思議そうに首を傾げて尋ねる。

「披露宴で、砂羽の隣にいた人。名字は桜宮さんだけど、CAの間では王子って呼ばれているの」

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