極上パイロットが愛妻にご所望です

愛する気持ちは増すばかり

 十月に入り、早番を終えた私は朝陽のマンションへ向かった。彼は今日オフで本社の会議に出た後、自宅に戻る予定になっている。

 たまには手料理を朝陽に食べてもらいたくて、近くのスーパーで食材を買って彼のマンションの部屋の前に到着した。

 どこにも出かけずに部屋でまったりするのもいいなと考えながら、一階のコンシェルジュのいるロビーを通り、エレベーターに乗って、部屋の前のインターホンを鳴らした。

 部屋の鍵は預かっているけれど、朝陽が在室なら押すべきだと思ったのだ。

 中から返事はない。

 職場を出たときにメッセージを送っていたのに、既読になっていなかった。

 まだ本社から戻っていない……?

 バッグから鍵を出して、玄関のロックを解除する。

 ドアを開けてみて、いつもスッキリしている広い玄関に革靴が一足、無造作に脱がれているのが目に入った。

 帰ってる? 疲れてお昼寝中とか……?

 スリッパに履き替えて、リビングへ歩を進めてみると、そこに朝陽の姿はなかった。

「朝陽?」

 部屋をあちこち見るのは悪いと思いながら、キッチンの作業台にスーパーの袋を置いて、寝室に行ってみることにした。

 静かにノックしてドアを開ける。

< 162 / 276 >

この作品をシェア

pagetop