極上パイロットが愛妻にご所望です
「うわっ……ドラマみたいな展開。すごいわ。そんなことが実際にあるなんて」

「そうなの」

 今までの話を口にするのは顔から火が出るくらい恥ずかしい。実際、顔が真っ赤になっているみたいに熱い。

「でも、昨日の久美さんの話では『喧嘩をして』って桜宮さんが機内アナウンスをしたんでしょ」

「うん、ハンナさんの件で。社内でも朝陽とハンナさんが婚約するって噂が飛んでいたでしょう? ロンドンでふたりの仲がいい写真を見せられて、もうダメなんだなって。別れる決心をしたの」

 そう言いながら、あのとき朝陽はハンナさんの頬に手を置いて見つめていた。その件に関しては聞かずじまいである。

 でも、朝陽は私を選び、行動を起こしてくれたのだから、聞かなくてもいい。そんな気持ちもある。

「桜宮機長との交際が内緒だったのは察するわ。桜宮機長は我が社の御曹司だし、CAを差し置いて、GSとだものね。あ、私たちの職業を卑下しているわけじゃないのよ? CAなら現地で会うことも可能なんだし。地上勤務だと不利なのかなって」

「うん。朝陽の周りにいるCAは容姿端麗だし、私なんか身長が低いし。私たちの身長差は三十センチもあるの。並んだら不釣り合いよね」

 朝陽とハンナさんの並ぶ姿を思い出したら、思わずため息が出る。

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