極上パイロットが愛妻にご所望です
 社内規定に違反しないくらいの明るさのブラウンの髪。くっきり二(ふた)重(え)の目に、少し低めの鼻。口角が上がった形のいい唇の私は、美人系とは言いがたい。
 
 少し低めの鼻のせいで、どこにでもいる顔。そんな顔を仕事のできる女性に見られるように、メイクを施すときはアイラインに気を使っている。
 
 身長も百五十五センチと、人並み。
 
 そんな私の仕事は空港で働くグランドスタッフ、通称GS。カウンターでお客さまの搭乗手続きや、乗客の機内への案内をしている。
 
 九歳の頃、空港で目にしたキャビンアテンダント――CAに憧れ、将来は飛行機に乗って世界中を飛び回りたいと夢を持ったが、残念なことに私が希望する航空会社の審査規定が厳しくて、身長が足りず、CAを断腸の思いで諦めた。
 
 それでも外国や飛行機好きの私は、それらに携わる仕事に就きたいと、都内の私立大学の英文科を卒業後、航空会社のグランドスタッフの派遣会社に就職した。
 
 そして去年の九月。二十五歳のとき、国内最大手の航空会社のグランドスタッフとして転職することができ、この四月で八ヵ月目に突入。
 
 現在、私が勤めている会社『ALL(オール) AIR(エアー) NIPPON(ニッポン)』――通称AANが国内最大手ということもあり、以前の派遣会社より、給料や待遇なども若干だけどよくなった。

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