極上パイロットが愛妻にご所望です
 イエローナイフは、オーロラが見られるというカナダの極北の街。

「本当に……?」

「ああ。俺も一週間休み取るから。砂羽にオーロラを見せたい」

 あのときのことを朝陽は覚えていてくれたんだと、胸が熱くなった。

「うん! 行きたいっ! ありがとう! とっても嬉しいわ」

 私は感激のあまり、朝陽の首に抱きついた。しっかりと彼の腕が背中に回り、抱きしめ返してくれる。

「ここ、どこだかわかってるのか?」

 クスッと朝陽は笑みを漏らしたとき、どこからか私の知っている声が聞こえてきた。

「まったく! 熱々なんだから」

 私は慌てて朝陽から飛びのいた。

 声の主はCAの制服でキャリーケースを引いている久美だった。フライト帰りのようだ。隣には私服の城田機長の姿も。

 落ち着かなく真っ赤になっている私に、三人は楽しそうに笑っている。

「城田さん、愛妻のお迎えですか。ご苦労さまです」

 朝陽は先輩の城田機長にからかうように言葉をかける。少し冷やかすように聞こえるのは仲がいいのだろう。

「朝陽もか。お互い愛する人には勝てないな」

 私は近づいてくるふたりに頭を下げる。

< 204 / 276 >

この作品をシェア

pagetop