極上パイロットが愛妻にご所望です
 それを下回るイエローナイフでの深夜オーロラ鑑賞のときは、防寒対策をしても凍えるほど極寒だそう。

 Lサイズのキャリーバッグを引き、エントランスまで下りたところで、ちょうど朝陽の運転するパールホワイトの車が角を曲がって見えてきた。

 私の目の前で車は静かに停止し、グレーのダウンジャケットと黒のデニムを履いた朝陽が出てきた。身長もあって、足も長いからカジュアルな服を着ても、もちろんスウェット上下だとしてもカッコよく見える。

「ごめん。待たせた」

 そう言いながら、車の後ろへ回り、バックドアを開けている。

「ううん。お疲れさま」

 朝陽は私のところへ来るとキャリーバッグを軽々と持ち上げ、車のバックドアから入れる。

「行こう。パスポートは?」

「そんな子供じゃないわ。ちゃんとバッグに」

 そう自信をもって言っても不安になって、クロスバッグを開けて確認する私に朝陽はクスッと笑みを漏らす。

「ほ、ほら、あるんだから」

 実際、パスポートがバッグの中に入っていて、ホッとしたというのは朝陽には内緒。

 だけど、そんなことはお見通しとばかりにニット帽の上からポンポンと叩かれる。

「乗って」

 朝陽は助手席のドアを開けて、私を席に着かせた。
 

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