極上パイロットが愛妻にご所望です
「本当だったのね! 勝手に噂が歩き回っているのかと思ったんだけど」

「う、ん……びっくりしたわ。突然立ち止まって私のIDを見ていたみたい」

 あのときのことを思い出すと、また胸がドキドキと暴れてくる。

「砂羽のID? どうしてなんだろ。もしかして、その豊満な胸のほうを見ていたのかもよ?」

 対面に座る比呂はニヤニヤと口元を緩ませ、身を乗り出すようにして私の胸へ目を向けた。

「やだ! 比呂っ」

 両手で胸を隠すようにして、目を細めて彼女を睨む。

 私の胸はFカップ。Bカップだという比呂は、私の大きな胸を「うらやましい」と口にする。

 反対に、私は中学三年の頃から胸だけがすくすくと育っていき、嫌だった。その頃から異性の目線が胸にいくようになって、それがコンプレックスになった。

 胸の分だけ、背が伸びてほしかった。

 社会人になって、異性に見られるのが嫌で仕方なかった思春期と比べると、幾分コンプレックスも克服している。

 桜宮さんも胸ではなくIDを見ていたのだと思っていた。いやらしい目つきなんて微塵も感じなかったし。

 でも、気にならなかったとはいえ、比呂のような普通の大きさの胸になりたかった。

「華奢なのに胸があるから、砂羽がうらやましいわ。桜宮さんがIDか胸のどっちを見ていたのかはわからないけど、砂羽のことが印象に残ったんじゃないかしら?」

「わ、私のことが印象に残った?」

 そんなことない、と一笑に付す。

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