極上パイロットが愛妻にご所望です
「はあ~、消えちゃった……」

 残念に思いながらも、あんなに雄大なオーロラを目にすることができてラッキーだった。もしかしたら、見られなかったかもしれないのだ。

 途端に、寒さが身に染みてブルッと震える。

「キャビンへ入って身体を温めよう」

 朝陽に手を引かれ、寒さでこわばった足でキャビンへ向かった。

 
 ホテルへ戻ってきたのは、二十三時三十分を回っていた。

 オーロラを見終えた私たちは、キャビンで温かいミネストローネスープとクラッカーで身体を温めてから、車で送ってもらった。

 部屋に入ってすぐ手袋を取り、防寒着を脱いでニット帽を外す。

 手は冷たくて、口元に持ってきて「はー」と息を吹きかけて温めていると、軽装になった朝陽がバスルームへ行き、すぐに戻ってくる。

「湯を入れているから」

「ありがとう。オーロラ、信じられないくらい美しかったね」

「ああ。今度は夏のオーロラにしようか。砂羽の鼻が真っ赤にならないように」

 朝陽の指が私の鼻をちょんと触れる。

< 226 / 276 >

この作品をシェア

pagetop