極上パイロットが愛妻にご所望です

結婚の条件

 自宅のベッドで目を覚ました私は「はあ~」と声を漏らす。時刻は、十時を過ぎている。

「戻ってきちゃったのね……」

 朝陽との旅行のすべてが夢のような時間で、とても幸せだった。左手の薬指に輝くエンゲージリングが、夢でないと教えてくれる。

 私たちは昨日の夕方、東京へ戻ってきた。

 朝陽は今日ローマのフライトで、すでに出社して飛行経路や天候の確認をしている時間だ。

 私は遅番で、旅行の片づけをしつつ、ゆっくり支度して出社する。

「今日から気を引きしめて頑張ろう!」

 十二月のクリスマス辺りから繁忙期。来年の四日頃までは目が回るほど忙しくなるだろう。

 特にAANは、路線や乗客数が他社より多いのも理由だ。

 朝陽も、航空法の規定一ヵ月百時間ギリギリまでスケジュールが入っていると、帰りの機内で話していた。

 両親への挨拶や、結婚式のことは来年になる。

 お母さんとお父さん、びっくりするだろうな……。

 両親は都内に住んでいるものの、ここ半年ばかり会いに行っていない。今度の休みに行って朝陽の話をさりげなく耳に入れておこうかな。突然ふたりで会いに行ったら、絶対に慌てるはずだし。

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