極上パイロットが愛妻にご所望です
「彼氏と行く旅行って、最高よね~。特に桜宮機長は帰国子女で英語が堪能、外国慣れしているから、しっかりエスコートしてくれたんでしょ?」

「うん。実はファーストクラスに乗せてもらったの」

 プロポーズの話は今ここで話すわけにはいかず、ゆっくり時間のあるときにと思っている。

 エンゲージリングも外してある。

「ええっ!? ファ、ファーストクラスにっ? すごいわ。さすが御曹司ね! あーっ。もっと聞きたいけど時間がないわね。また後で話してね!」

 比呂は早口でそう言って残念がり、着替える手を速めた。
 

 朝陽に会えない時間はなんと長いのだろう。でも、彼は今ローマにいる。スマホに収められた旅行の写真を眺めながら寂しさを紛らわす。

 勤務が休みの今日、カナダのお土産を持って実家へ向かった。

 築年数の古い五階建てのマンションの二階の角部屋の我が家は、久しぶりで懐かしい。そう思うのは朝陽と出会ってから一度も来ていないからかもしれない。私の生活も目まぐるしく変わったし。

 江戸川区の実家に着いたのは、お昼前。

 土曜日でお父さんも、大学生の妹の美羽(みわ)も家にいた。

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