極上パイロットが愛妻にご所望です
「なに? お姉ちゃん、カナダへ行ってきたのっ!?」

 お土産で渡した袋の中をさっそく開けてみて、大きな声を上げた。お土産はメープルシロップとクッキー。お母さんと美羽にはブランドのリップ。お父さんにはウイスキーを買ってきた。どれもお土産としては定番だ。

「うん。先週行ってきたの」

「いいな~。私も行きたい~」

 ダイニングのテーブルに着きながら、話が弾む。キッチンからお母さんが鍋を持ってきた。蓋を開けて、熱々のすいとんに、私は嬉しい声を漏らす。

「カナダって、この時期日本より寒いんじゃないの?」

 お母さんがすいとんを各自の小どんぶりによそいながら口を開く。

「オーロラを見に行ったの」

「まあ! オーロラを? 見られたの?」

 お母さんから小どんぶりを手渡され、ウイスキーを手に取って眺めているお父さんの前に置く。嬉しそうでよかった。

「三日間あったんだけど、ようやく最終日に見られたの。それもとても大きなオーロラを」

「よかったわね。見られないこともあるとテレビで見たことがあるわ」

 全員の分をよそい終えたお母さんは、椅子に腰を下ろした。

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