極上パイロットが愛妻にご所望です
「比呂、おはよう」

 私も笑顔で挨拶をしながら、彼女の並びのロッカーを開けた。話があるのか、ひょこっとロッカーのドアの裏から比呂は顔を出し、口を開く。

「今日からOJTよ。新人が入って、ようやくこの忙しさが緩和されるわね」

 そう言ってから、あとはスカーフを首に巻くだけの状態になった比呂は、口をすぼめて「ふう~」と息をつく。

 OJTとは現場研修のこと。今日から慌ただしくなるだろう。

「新人がようやく戦力になるのは……どうだろう。一ヵ月後くらいじゃない?」

 私は手早く服を脱ぎ、制服の水色のブラウスと、スカート、ジャケットを身につける。

 紺色の地にピンクのピンストライプが入った制服で、スカートの丈は膝より少し上。AANのトレードマークの水色に、赤で縁取りされたスカーフを首に巻けばでき上がりだ。
 
 比呂はテキパキとスカーフを巻き終え、ロッカーをパタンと閉めている。

「砂羽が入社してくれたときは嬉しかったわ。即戦力だったもの」
 
 他社でグランドスタッフとして働いていた私は、AANでも仕事内容は同じで、一日だけ先輩がつき、翌日からはひとりで任された。
 
 上司や同僚たちからは、真面目で人当たりがいいと言われている。
 
 大学卒業後からここで働いている比呂は、私と同い年。同じグループに配属され、すぐに仲よくなった。

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