極上パイロットが愛妻にご所望です
 ムキになる私に、桜宮さんは口元に笑みを浮かべ頷く。

「だよな。あまりグイグイ迫ったら、砂羽が逃げそうで怖くて書けなかった」

 ううっ……、口がうまいのよね……。

 そこで、目の前が明るくなり、車は品川区内の高級ホテルの車寄せに停められた。

「着いた。降りよう」

 私側のドアが外側からホテルのドアマンによって開けられる。桜宮さんは降りてこちらに回ってくるところだ。

「いらっしゃいませ」

 ドアマンに声をかけられ、小さく頭を下げた私は地面に足を下ろした。
 

 彼に連れてこられたのは、二階にある点心のレストランだった。

「点心……、今日のフライトは台湾でしたよね?」

「ああ。とんぼ返りだから、悔しいことにコックピットミールしか食べていないんだ」

「それで、台湾料理なんですね」

 桜宮さんは台湾料理を食べたかったみたい。私も点心は大好きだ。こんな最高級ホテルの有名台湾レストランであれば、期待大である。

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