極上パイロットが愛妻にご所望です
 彼はここに何度も来ているようで、支配人の挨拶後、すぐに窓際のテーブルに案内された。

 改めて対面に座りふたりきりになると、にわかに緊張感が増してきて、美貌の顔から視線を窓の外に泳がせる。

 そこからは緑豊かな庭園が見下ろせた。ところどころにライトアップがされ、緑が明るいグリーンになって美しい。雨で窓ガラスが曇っているのが残念である。

「腱鞘炎はどう?」

 ふいに声がかかり、思わず庭園を見入っていた私はハッとなり、桜宮さんを視界に入れる。

「今日、一条総合病院へ行ってきました。さほど痛くなくなったので、もう大丈夫です。あの、お休みの手配をしてくださってありがとうございました。あと、書類も。助かりました」

 まだお礼を伝えていなかった私は頭を下げた。

「仕事中に痛めたんだから当然だ。痛みが引いてよかった」

 そこへ黒服の男性スタッフがやってきて、メニューをそれぞれ手渡し、去っていく。

「好きなものを頼んで」

「桜宮さんが食べたいお料理でいいです」

 メニューを開かずに答えると、彼は口元を引き小さく首を左右に振る。

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