極上パイロットが愛妻にご所望です
「ふ~ん、砂羽は従順なタイプ?」

「じゅ、従順なわけでは……」

「だよな? この前は違っていたし。ちゃんと意見を言ってくれたほうがいい」

 私の恋愛経験はふたりだけで、桜宮さんの反応は今までの彼らとは異なっている。

 大学のときと、以前の会社のGSの先輩と付き合ったことがあったが、どちらとも長続きはせず、半年ほどで別れていた。ふたりとも好きな女性ができたせいで。

 彼らとは、こんな高級ホテルで食事をしたことがないので、食べたいものを……と、言われても困ってしまう。

「砂羽?」

「……いろいろな点心が食べたいです」

「OK。俺もだ」

 桜宮さんはメニューをめくり、点心のコースを選んでくれた。飲み物のオーダーは冷たいジャスミン茶。

 料理を待つ間、やっぱり気詰まりである。でもそう思っているのは私だけのようで、桜宮さんは余裕たっぷりの所作で、足を組み替え、私を見つめる。

「砂羽、返事が聞きたい」

 声がいつもより甘く聞こえ、心臓が痛いくらいギュッと絞めつけられた。

 私なんかが、桜宮さんとお付き合いするのは釣り合わないと思う。

 でも、私も彼に惹かれている。その気持ちは隠せない。

 特に、桜宮さんと話をするようになって、身近に感じられるようになった。そしてこんなふうに見つめられたら……。

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