極上パイロットが愛妻にご所望です
「砂羽?」

 促され、私は深呼吸を小さくしてから意を決して口を開く。

「本当に私でいいのでしょうか?」

 桜宮さんは瞳に強い力を込め、口元に笑みを浮かべた。

「そうでなければ軽々しく付き合おうなんて言わない」

「では……こ、こんな私でよろしければお願いします」

 私はテーブルに額が付きそうなくらいお辞儀をした。けど、勢い余って、テーブルに当たってしまい、ゴツンと音が。

「さ、砂羽っ!」

 驚いた桜宮さんは腰を浮かせた。

「大丈夫です。すみません……」

 おでこをさすりながら急いで取り繕うとするも、目線を合わせられない。

 恥ずかしすぎる……。

 そのとき、クッと喉から笑う声がした。

「可愛すぎるんだけど?」

 びっくりして思わず桜宮さんを見てしまうと、美麗な顔に笑顔が広がっていた。

「その様子だと怪我が絶えない?」

「い、いいえっ! 怪我なんてずいぶんしていませんっ」

「砂羽、敬語は禁止だから。俺たち今から恋人同士だろ? それと、桜宮さんではなく、朝陽って呼んで。砂羽には名前を呼んでもらいたい」

 サラッと言ってのけられ、瞬時コクコク頷く私だ。

 そこへ数種類の前菜や点心が運ばれ、その美味しさに食欲が進む。

< 90 / 276 >

この作品をシェア

pagetop