極上パイロットが愛妻にご所望です
 ランチをたっぷり食べて、久美の自宅で温泉まんじゅうを三個も食べたのに……。

「どうした?」

「え? いいえ……ううん。今日は食べすぎだなって」

 つい敬語を使ってしまいそうになり、慌てて言い直す。そんな私を彼は楽しそうに眺めている。

「スタイルに気をつけているとか? 俺には、別に気にすることないように見えるけど?」

 そう言って、桜宮さんは口直しに冷たいジャスミン茶を口にした。

「そんなことないです」

 ため口と言われても、すんなり出てくるわけがない。そんな私に桜宮さんは仕方ないというようにフッと笑みを漏らす。

 桜宮さんは容姿端麗、スタイル抜群のCAといつもいるのに……。

「俺は痩せすぎの女は嫌だ。第一、抱き心地が悪い」

「だっ! 抱き心地って……」

 桜宮さんと一緒だとふい打ちにドギマギして、右往左往してしまう。

「ほら、空心菜炒めを食べて。うまいよ」
 
 彼は話をサラッと変え、空心菜炒めの大皿を私のほうへずらす。緑が鮮やかで、シンプルな炒め物だ。
 
 空調設備が整っている部屋なのに、やたらと暑く感じて、冷たいジャスミン茶を飲んで気休めに冷やそうした。
 
 それから彼のおすすめの空心菜炒めを皿に取って、口へ運んだ私だった。

< 91 / 276 >

この作品をシェア

pagetop