極上パイロットが愛妻にご所望です
「嫉妬の嵐?」

 腑に落ちないような声がする。

「そうです。桜宮さんはモテるんですから」

 だいぶ敬語を使わず、口調がぎくしゃくせずに滑らかになってきている私だ。

「ずっと『桜宮さん』だな。……『朝陽』って呼べよ」

 私の口調は、桜宮さんにとって気に入らないみたいだ。

「すぐにはそんな馴れ馴れしく呼べませんっ。誰よりもモテるのはわかっていますよね?」

「まあな」

「もうっ! 自覚しているのなら、私のためだと思って内緒にしてくださいっ」

「……とりあえずわかった。着いたぞ」

 不服そうな声の桜宮さんは静かに車を停車させた。

「ありがとうございました。点心、とても美味しかったです。ごちそうさまでした」

 シートベルトを外し、運転席のほうへ身体を向けて頭を下げると、ドアの取っ手に手をかけた。

 桜宮さんも車から降り、ズボンのポケットに片方の手を入れながら私のほうへやってくる。

 彼の姿に恋心が募り、別れたくないと思ってしまう自分がいることに気づく。

「……フライト、気をつけてくださいね」

「ああ。メッセージする。男を近づけるなよ」

「ええっ? 近づく奇特な男性は桜宮さんだけですよ」

 私はおかしくなって、口元に手を置いてクスッと笑った。

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