極上パイロットが愛妻にご所望です

ふい打ちのパイロット

　ふああ～、と大きなあくびを何度も噛み殺し、その度に両手を口に当てている。

　周りに乗客がいないのを見計らい、大きく頭を振って眠気を飛ばす努力を試みる。

　ふい打ちのキスのせいで、眠れなかったのだ。

　朝三時四十五分に起きるのだから、眠れたとしても二時間弱。起きられる自身がないからと、睡眠を諦めた。

　それが、今の代償。なんといってもあくびが止まらない。あと数分で休憩に入る。今日は比呂と同じローテーションだった。

　チェックインカウンター業務の引き継ぎにやってきたのは住田くんと畑中さんの新人コンビ。ちょっとしたトラブルも落ち着いて対処できるようになってきたふたりだ。

「お疲れさまです」

　相変わらず住田くんは人懐っこい笑顔でねぎらってくれる。

「腱鞘炎の具合はいかがですか？」

　畑中さんの心配そうな瞳に、私は笑顔になる。

「ありがとう。もうほとんど痛みはないの」

「よかったです。癖になるというので、大事にしてくださいね」

「住田くん、畑中さん、あとはよろしくね」

　比呂はふたりに声をかけたのち、私と並んで食堂へ向かう。

「眠そうだけどどうしたの？」

　両手を口に当てていたが、バレており、私は申し訳なさそうな顔を比呂に向けた。


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