あなたのその声で…
それから、3日ほどたったある日、あたしの携帯がブルっと震えた。




着信画面には登録されていない番号の表示。


とりあえず、通話ボタンを押す。


「・・・もしもし・・?」


電話口から、「こんにちは~。」と陽気な声が響いた。



あたしはすぐに誰か分る。


“彼女”だ。



数日前に刑事がきたばかりだったから、すぐに分かってしまった。


それにしても絶妙なタイミングに、あたしはドキドキしながら会話を進めた。



「ど、どうしたんですか?お久し振りですねっ!」


「うん、実はさ、お願いがあって・・。」


“彼女”のお願いとは・・・




入居を決める時から、あたしは、彼女に対して1つだけ不安に思っているっことがあった。


それは、彼女が持っている被害妄想。



案内をしていた際、彼女は引っ切り無しに外を気にしていた。



「なんか気になることでもありました?」



あたしが尋ねると、彼女は話始めた。



「実はね・・、ストーカーってほどでもないんだろうけど、たまに、知らない人が部屋の下でずっと部屋を見上げているときがあるの・・・。」



その時は、(キレイな人だから、やっぱりそんなこともあるんだろうな・・。)

ぐらいにしか思わなかった。




長年、人に部屋を貸す仕事をしていると、ストーカーの類の話はよくでる。




けれど、“彼女”はそれだけでは済まなかった。



入居前に、『天井をはがして盗聴器が仕掛けられていないか全部見てほしい』と言うのだ。




< 10 / 79 >

この作品をシェア

pagetop