あなたのその声で…
「もしもし?」


2コール鳴るか鳴らないかで、ハスキーボイスが電話口から聞こえた。

声を聞いた瞬間、何故かあたしの目からはボロボロと涙が出てしまう。


(ヤバイ!我慢しなくちゃ。)


そう思えば思うほど涙が溢れる。


「もしもし?」


もう一度、電話口から刑事さんの声が聞こえた。



「ご、ごめんなさい。・・・彼女から・・・電話・・ありました。・・・」


「そうですか。でもどうして泣いてるんです?」


いつものように冷静に刑事さんは問いかける。


「ちょっと、友達と飲んでて・・・、それで、思い出したくないこと・・・思い出しちゃって・・・・。すみません。・・それで・・あの・・彼女との約束の件なんですが・・。」


いいかけたあたしに、刑事さんは、「今、どこです?自分も今日は早く仕事上がれたから、街にいたんですけど、よければ、お茶でも飲みながら、日曜日の件、打ち合わせできませんか?」と言った。



「え・・・?でも・・あたし今、友達といるし・・・それに・・だから・・あの・・」


突然の誘いにドキドキしながら答えるあたしの後ろでメロディーが流れた。



街の中心部にある大きな時計台。


1時間ごとに時刻を知らせるメロディーが鳴る。

時計の針は、ちょうど10時を指していた。





「いる場所、分かっちゃいました。オレ。歩いて3分くらいのトコにいます。とりあえず。そこに行きますね。」



あたしの返事を待たずに、電話はブツリと切れてしまった。


仕方なく、携帯を閉じると、3分もたたずに目の前に刑事さんが現れた。




「よく、分かりましたね・・・。」


「刑事ですから。」


少しだけ笑って、ポケットからティッシュを差し出した。












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