あなたのその声で…
「せっかくのメイクがボロボロですよ。」



ハッとして、ティッシュを受け取る。



「ずびばぜん」


あたしはもらったティッシュで思い切り鼻をかんだ。


ビルの出口からぞろぞろと友達が出て来た。


そのうちの一人が、あたしを見つけて駆け寄ってくる。


「ちょっと~!心配したよ?ココにいたの・・・?」


と言いかけて隣の刑事さんに気が付いた。


「こんばんわ。」


刑事さんはいつも通りの無愛想な顔で、友達に挨拶をする。


友達は「?」という顔であたしを見たけれど、泣きはらしたあたしのひどい顔と、刑事を見比べて、何かを勘違いしたようだ。


「あ、今日はココで解散ね?また近いうち飲もっ!」


そう言うと、みんなのトコロへ走って行ってしまった。




あたしはとりあえず刑事さんの顔を見上げる。





「じゃま、しちゃいましたね。」


刑事さんは、少しもそうは思っていない表情で、そう言った。




あたしはフルフルと首を振る。


元はと言えば、あたしが電話口で泣いてしまったから、刑事さんは来てくれたのだろう。

それが分かったから、イヤじゃなかった。


「お茶、っていいましたけど、もし良ければ少しだけどこかでお酒、飲みません?」


刑事さんという職業のせいか、安心していたあたしは素直にうなずいた。



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