あなたのその声で…
「今回は、なんだか面倒なことに巻き込んじゃって、ごめんなさい。」


刑事さんが突然頭を下げた。



最初なんのことだか分からず、キョトンとしてしまったけれど、しばらくして”彼女”のことを思い出す。


「あ、いえ、全然。あの、お願いですから、頭下げるのやめてください。」




「とりあえず、日曜日の段取りなんですけど・・・。」



頭を上げた刑事さんは、またいつものように淡々と、ハスキーな声で説明を始めた。


「日曜日は、朝ご自宅までお迎えに上がります。それで、あなたが事務所に入ったあと、しばらくしてから私も事務所におじゃまさせていただきます。あそこの事務所はけっこうカウンターから見えずらい場所がありそうなので、私はそこで待機します。あなたは通常通り、彼女へ鍵を渡す業務をしてください。できれば、会話はなるべく長く伸ばしてください。」



あまりの冷静な説明に、(本当に日曜日の打ち合わせのために誘ったんだ・・・。)と何故か寂しくなる。



「わかりました。けど、会話はあたしが伸ばさなくても、きっと長くなりますよ。」

あたしが言うと、「?」という顔で刑事さんがあたしを見た。




「スキ・・・ですから・・。」



”スキ”という言葉を使ってしまって、何故かあたしは顔が熱くなった。



(バカ、なに考えてんの!今のはそういう意味じゃないんだから・・。)



「あ、その、『しゃべるのが』・・って意味です・・・。」



「あ、はい。分かりますよ?」


「そ、ですよね・・・。」



ハハハと、から笑いするしか・・なかった・・・。







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