あなたのその声で…
その日の夜、彼はあたしの家に来てくれた。
改めて、病院でもらった写真を見せながら彼に報告する。
「まだ、ちっちゃいから全然映ってないんだけどね、来月もう1回来てくれって。その時にはもっとはっきりした写真がもらえるって!」
あたしは興奮気味に、彼に一気に説明した。
彼は、「そっか、よかったな・・。」
そう言って喜んでくれたように・・見えた・・。
その時のあたしには。
次の月、前回もらったものとは比べ物にならないぐらい、はっきりとした固体が映る写真を手に、あたしは意気揚々と自宅へ戻る。
(お母さんにも、報告しなくちゃ。)
あたしはそう思って、携帯を開いたけれど、やっぱり彼から、はっきりとプロポーズの言葉がほしくて、その報告はそれからにしようと携帯を閉じた。
その頃、彼とは今まで通り会っていて、その度にあたしは、「ね~いつ実家に挨拶に行くの?」とせがんでいた。
そんなあたしを、彼はいつもなんだかんだと用事をつけては、はぐらかす。
少しずつ、あたしの心の中に生まれた黒い影に、あたしは気づかないフリ、をしていたんだ・・・・・。