あなたのその声で…


最終的に、あたしはその日、彼の決断に頷くことができなくて、自宅へ帰った。




家に戻ってからも、あたしの頭は真っ白で働かない。




その時、たまたまつけていたテレビから、残酷なことに出産シーンのドキュメントが流れた。




真っ白の頭のまま、ボンヤリそれを見ていたけれど、気が付いたときには、大声を上げて一人、泣いていた。






何時間ぐらいそうしていたんだろう・・・。



もう声も、涙も枯れはてた。




誰かの声が聞きたい・・・。




あたしは、実家に電話した。








「お母さん・・・。」





あまりにひどいあたしの声に、母親がびっくりして駆けつけた。



あたしの自宅と実家は歩いて10分ほどの距離。


今のあたしには、それがひどくありがたかった。







「どした?」




優しい母の声に、枯れていたはずの涙がまた湧いてくる。




「フラれ、ちゃった・・・。」



「そっか・・・。」




ムリに聞こうとしない母親に、あたしは、洗いざらい話した。

< 36 / 79 >

この作品をシェア

pagetop