あなたのその声で…
最終的に、あたしはその日、彼の決断に頷くことができなくて、自宅へ帰った。
家に戻ってからも、あたしの頭は真っ白で働かない。
その時、たまたまつけていたテレビから、残酷なことに出産シーンのドキュメントが流れた。
真っ白の頭のまま、ボンヤリそれを見ていたけれど、気が付いたときには、大声を上げて一人、泣いていた。
何時間ぐらいそうしていたんだろう・・・。
もう声も、涙も枯れはてた。
誰かの声が聞きたい・・・。
あたしは、実家に電話した。
「お母さん・・・。」
あまりにひどいあたしの声に、母親がびっくりして駆けつけた。
あたしの自宅と実家は歩いて10分ほどの距離。
今のあたしには、それがひどくありがたかった。
「どした?」
優しい母の声に、枯れていたはずの涙がまた湧いてくる。
「フラれ、ちゃった・・・。」
「そっか・・・。」
ムリに聞こうとしない母親に、あたしは、洗いざらい話した。