あなたのその声で…
「帰ってきたら、お話があるの。内容はもう分かっていると思うけど。必ず電話、よこしなさい。」



最後は、完全に怒りを含んだ口調で、“彼女”の電話は切れた。




「ど、どうしよ・・・・」



抑えようと思っても、ガタガタと膝の震えが止まらない。





ガタガタ、ガタガタ、震えたまま、すっかり外は朝の空気に包まれていた。




部屋の前の廊下が次第に賑やかになる。

みんな朝食でもとりに行くのだろう。


あたしはもちろん、食欲なんかまるでなくて。


「もしもし。」



何ヶ月かぶりに聞く、ハスキーボイス。


その瞬間、涙が溢れた。



「も、もしもしっ・・」


「?どう、したんですか?」


さすがに、朝一の泣きながらの電話に、いつもは冷静な刑事さんも、動揺を隠せな様子。


「か、彼女から、電話がっ・・きてっ・・・」


最後の方は、もう声にならなかった。



「今、どこですか?」


「今は、ちょっと旅行に来てて・・・。けど、会社にも言ってないはずなのに、“彼女”それも・・知ってて・・・・。」



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