あなたのその声で…
「お戻りは?空港まで、迎えに行きます。」


やっといつもの冷静な刑事さんの口調に戻った。


「今日、帰ります。・・時間分かったら、電話します。」


やっとの思いで、それだけ伝えて電話を切った。




それから、あたしは、ツアーのみんなよりも一足早く出発することにした。


「え?帰っちゃうの?これからいろいろ見に行くんだよ?」


サクラの部屋に行き、急用で帰らなければならなくなったことを告げると、最後に一枚の紙きれを渡された。


「戻ってからも、連絡ちょうだい。」


そう言って笑った彼女の顔は、昨晩、あたしを誘った時のソレだった。



とりあえずサクラにだけはお別れを言い、あたしは空港へと向かう。

ちょうど良く、空港について30分も待たずに搭乗手続きを終えることができた。

飛行機に乗り込み、離れていく南国のブルーを見降ろす。


今回の旅で、あたしは得るものがあったのだろうか...。

そもそもあたしの今回の旅の目的は何だったんだろう...?

刑事さんのことを忘れたくて、けど結局刑事さんに迷惑をかける形となってしまった。


それより何より、"彼女"あたしに何をするつもりでいるんだろう...。



ふと、思い出したくないことを考えてしまって、無意識に頭を振る。



(空港に着けば、刑事さんが待っていてくれる。刑事さんが守ってくれる。)


刑事さんを忘れなくちゃいけないのに、今のあたしには、刑事さんしか頼れる人がいなかった....。




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