あなたのその声で…
その日、結局”彼女”から連絡がくることはなく、けれど、あたしはうまく眠ることができなかった。





次の日。


あたしは久しぶりに出社して、とにかく仕事に没頭した。


いつもならたいくつで仕方ないデータ入力も、今日だけは無心でやった。


とにかく”彼女”のコトを思い出したくなくて。



そういう日は、あっと言う間に終業時間がやってくる。


この日は、あたしからみんなを誘って飲みに出かけることにした。


「お疲れ~」.....カチンカチンとジョッキをぶつけ合う。


お通しのマグロの山かけを口に運んだ瞬間、あたしのいつもあたしの後ろの席に座っている同僚が声をかけてきた。


「お前さ~、あの刑事となんかあんの?」



あたしは思わず、箸でつかみかけていたマグロをテーブルに落とした。


「な、何?急に....。」


同動揺を隠せず、あたしは答える。


「だってさぁ~、おまえが会社休んでる間にあの刑事がきて、おまえの様子しつこく聞いてったから。」



「?・・・?!」



「どういうこと?!」


「いや、おまえが休んだ日に刑事が来て、おまえが休みだって伝えたら、なんで休みなんだってしつこいからさ~、とりあえずオレも詳しくしらね~し、あの事件の件でなんかあったんじゃないか?って冗談で言ったら血相変えて飛び出してったんだよ.....って、あれ?」




あたしは同僚の話を最後まで聞けずに外に飛び出していた。



唯一持って出た携帯電話をそっと開く。


刑事さんの電話番号は、リダイヤルを押せばすぐに表示された。



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