あなたのその声で…
「で?”彼女”はなんて?」



急な質問に、なにも考えていなかったあたしはしどろもどろになる。



「え?あ、あぁ....あの、えっっと.....。あ、そうだ!これから家に行くって!すごく怖くて.....。」



とっさに、そう、答えてしまった.....。



「.....わかりました。では、ご自宅までお送りします。」


「...ありがとうございます...。」



そう言うしかなくて、あたしは黙って刑事さんの助手席に乗り込んだ。



「今日は、覆面?パトカーじゃないんですね?」



今、あたしが座っている助手席は、いつもの車のようにゴテゴテとした機械はついておらず、かすかに甘い香りが漂う清潔感のある車だった。

無線の音も聞こえず、あたしの大好きなミュージシャンのバラードが静かに流れる。


刑事さんは何故か少し怒ったように、「今日はもう仕事が終わりですので。」とだけ言った。



自宅までは、車だとあっと言う間。

沈黙に気まずさを覚える間もなく車はマンションの前に着いてしまった。


「お茶、飲んで行きませんか?」

あたしは、さっき、刑事さんが言った『今日はもう仕事が終わりですから
』といった言葉に賭けた。


これで断られたなら、もう二度と刑事さんを呼んではいけない。

心臓は破裂寸前だったけれど、それは顔には出さずに。





そして、刑事さんが答えを出す。


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