屍病
1年3組の教室を出た私達は、音楽室に向かう為に階段を上がる。


「それにしても、雄大も真倫ちゃんも、さっきはかっこよかったよ。年上の人に、あんなふうに言えるなんて」


「俺はかっこよくなんてないさ。殴られて反撃も出来なかった。今ほど強くなりたいと思ったことはない」


悔しそうに拳を握り、首を横に振る雄大。


「私は……許せないだけだよ。ああいう、世界は自分を中心に回ってるって考えてるようなやつが」


真倫ちゃんが言うように、そんな感じはする。


そしてそれは、あのふたりだけで生きるなら必要かもしれないけれど、人がいる場所に転がり込むならば、災いを持ち込むことにほかならない。


イーターだけでも大変なのに、私達があのふたりの被害者にならない為には、皆で話し合って対策を考える必要すらあるのだ。


「全く……余計な手間を掛けさせてくれるよ。最悪、あのふたりとも戦うことを考えなきゃいけないな」


この状況で、子供同士が殺し合う事態に発展するかもしれないってこと?


私は、生き残った子供達は、無条件で協力しあうものだと勝手に解釈していた。


でも、あのふたりを見て、その解釈から外れた人も中にはいるんだということを思い知らされた。
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