屍病
雄大の言葉に、桐山はショックを受けたようだったけど、それでも雄大は再び拳を振り上げた。


「それなのにお前は! こんなところで!」


そしてその拳が桐山に振り下ろされた。


「ぐっ! テメェッ! 何なんだよさっきから!」


桐山にしてみれば、自分が知らないところで起こったことを、自分のせいにされているように思えたのだろう。


でも、雄大の言っていることもわかる。


戦わなくてもいいから、あの場にもうひとり分の目があれば、殺し損ねたイーターを見つけられたかもしれなかったから。


「ちょっと、やめなよ! 桐山が呑気に弁当を食べてたのは腹が立つけどさ。今、仲間同士で喧嘩しても仕方ないだろ!」


男の子ふたりの殴り合いに、勇敢に飛び込んだ真倫ちゃん。


凄いな。


私にはとてもそんなこと出来ないよ。


「山瀬……くっ、そうだったな。つい感情的になってしまった。すまない桐山」


真倫ちゃんに止められて、雄大は我に返ったようで、拳を下ろして俯いた。


だけど、気が収まらないのは桐山だ。


「わっけわかんねぇ! いきなり殴られて謝られてよ! ふざけるんじゃないぜ!? あぁ!?」
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