屍病
実際には見ていない桐山が、私達の言葉を聞いて腹を立てた様子で。


「確か……山中とか言ってたな。山中竜也だ。まあ、廊下で話していても仕方がない。赤ん坊だっていつ起きるかわからないからな。とにかく音楽室の中に入ろう」


雄大が立ち上がり、ポケットから鍵を取り出してドアに近付いた。


「や、山中……竜也?」


一体どうしたのか、その名前を聞いて、桐山は固まったように動きを止めていた。


廊下で話すより音楽室で。


全員音楽室に入って、私達は一安心。


この部屋はドアがひとつしかないし、しかも防音扉だから重くて頑丈だ。


万が一イーターがここまで来たとしても、破られることはないという安心感が、私に安堵の吐息を漏らさせた。


「お、お前らさ。さっき山中竜也って言ったか?」


部屋に入るなり、桐山が尋ねる。


「ああ、確かに山中竜也と名乗った。どうかしたのか?」


雄大と桐山はさっき喧嘩をしたばかりだから、普通ならお互い避けてても不思議ではないのに、冷静に話をしている。


それが私には不思議に思えた。


「どうしたもこうしたもあるか! もし本当に山中竜也だったら……俺達は死ぬぞ」
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