屍病
「チッ! ろくなもんがねぇな。幕の内弁当とか、この時代に誰が食うんだよ。頭悪いんじゃねぇの?」


「私、パスタ食べたいよパスタ。なんで取ってきてないわけ?」


ふたりして好き勝手言ってくれる。


そんなに文句を言うなら、自分達で取ってくれば良いのに。


「ど、どれでも好きなものを二つあげますから、ここから出て行ってください。ここには赤ん坊もいるし、騒がれたくないんです」


覚悟を決めたように、雄大が山中にそう言った。


最初から怖がっていた桐山ではとても言えなかっただろう。


だけど、山中は思いもよらないことを……いや、ある意味では想像通りの言葉を発したのだ。





「あ? 何言ってんだテメェ。この弁当は、ありがたく俺達が全部貰ってやるからよ。腹が減ったならテメェらで調達してこいや」


「あ、その時にパスタも忘れないでね。私、どうしてもパスタが食べたいから」






私達の食べ物を奪っておいて、食べたければ自分達で取ってこいだなんて。


桐山に聞いてはいたけど、どうしようもないクズだ。


「な……話が違う!」


「テメェと取り引きした覚えはねぇよ。弱肉強食って言葉知らねぇのか? 俺は強い、テメェらは弱い。テメェらは俺の奴隷だ。働き蟻みたいにせっせとメシを運んでくりゃあいいんだよ」
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