屍病
言いたいことだけ言って、戻ってくれるのかと思ったら、椅子に腰掛けてお弁当を食べ出した。


これは自分達のものと言わんばかりに、足元に買い物かごを置いて。


「あー、不味い。やっぱ唐揚げ弁当より、牛丼の方が良かったか」


「じゃあ牛丼も食べなよ。不味いもの食べたくないでしょ」


「おお、風雪。お前天才かよ」


そう言って、食べかけの唐揚げ弁当を机の上に置いて、新たに牛丼を食べ始めた山中。


「あぁ……お、俺の唐揚げ弁当が……」


桐山が嘆いているけれど、そうじゃないでしょ。


「ちょっと! そんなもったいない食べ方ありえないでしょ! 食糧調達がどれだけ大変かわかってないでしょ!」


思わず真倫ちゃんが声を上げる。


だけど、山中と風雪は不思議そうに首を傾げて真倫ちゃんを箸で指した。


「大変とか、んなもん俺達には関係ねぇだろ。取ってくるのはテメェらなんだからな。それに、俺の物を俺がどうしようが勝手だろうが! あぁっ!?」


この人達は……本当にこの状況がわかっているのだろうか。


元の平和な世界じゃないのに。


食べ物だって、底を突くかもしれないのに。


何もわかっていないから、こんな事が出来るんだろうな。
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