屍病
雄大と真倫ちゃんに止められながらも、桐山は首を横に振った。


「次、食糧調達に行ったら死ぬかもしれねぇ。腹が減って力が出なくて死ぬかもしれねぇ。やりたくないけど、今食わなかったら後悔するかもしれないだろ! だから俺はやる!」


食べ物は大事。


それはわかっている。


残した唐揚げ弁当でも、お腹が空いたら食べるだろうと思っていたから。


桐山はプライドがないとか、そういう話ではなくて。


今食べなければ死ぬかもしれないという思いがあって、そうしようとしているのならわからない話じゃない。


何がなんでも生きたいと思っているのなら。


「やるぞ! うおおおおおおっ! ワンッ!!」


本当に、山中の前で3回まわってワンと言った桐山。


普通なら情けないと思うんだろうけど……今の状況だとどうなんだろう。


「そんなに食いたいのかよ。情けねぇ野郎だぜ」


そう言うと、山中は唐揚げ弁当を持って窓際まで歩いて、窓を開けた。


そして、それを窓から外に放り投げたのだ。


「あ、ああっ! 俺の唐揚げ弁当!」


「考えはしたけど、やっぱやらねぇ。食いたけりゃ、地面に落ちたのを食って……」


と、山中はそこまで言って、何かに気付いたのか、窓の外に視線を向けた。
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