屍病
何が原因とか、そんなことまではわからないけど、大河くんが抱える赤ん坊はすでに生命活動を停止していた。





「赤ちゃん……死んだの?」





大河くんの寂しげな声が、うるさい音楽室に響いたようで。


口論していた二人も、それが聞こえたのか喋るのを止めてこちらを向いた。


雄大も桐山も、驚いた様子で。


山中はその場に屈んで、顔を手で覆いブツブツ何か言っているけど。


「え? 死ん……え? 嘘だろ?」


桐山も信じられないのか、オロオロとうろたえている。


医者もいない、親もいない。


食べ物もベッドもない状況で、子供達だけで面倒を見ること自体に無理があったのかな。


それにしても、こんなに早く死んでしまうなんて。


「何……死んだの? その赤ん坊」


風雪がそう尋ねて、大河くんが小さく頷いた。


真倫ちゃんを押し退けて、大河くんに近付くと、風雪は手を出して赤ん坊をそっと抱いたのだ。


その姿に、さっきまで口論をしていた真倫ちゃんも何も言えずに。


風雪は立ち上がり、屈んでブツブツと呟く山中に近付いた。


「……どうする。どうすりゃいい。考えろ……どうすれば助かるんだ」


「竜也、あんたはいつもそう。追い詰められるとそうやって小さくなって。でも大丈夫だから。まだ私達は死んだわけじゃない」
< 125 / 238 >

この作品をシェア

pagetop