屍病
山中は、風雪の言葉で顔を上げて不思議そうに首を傾げる。


私達にも風雪が何を考えているかわからなくて。


こんな絶望的な状況で、何か考えがあるのかなと思ってしまう。


「風雪? お前……」






「大丈夫だよ。ほら、あいつらの餌があるから」





そう言った風雪は、抱いていた赤ん坊の遺体を窓から投げ捨てたのだ。


「ほら、食べなよ」


その言葉が聞こえた瞬間、大河くんが絶叫に近い悲鳴を上げた。


嘘でしょ。


この人、赤ん坊をここから投げ落としたの?


「な、何やってるんだよ! あんたは!」


呆然とする私の目の前を、真倫ちゃんが駆け抜けて行く。


そして、風雪の顔を目掛けて強く握りしめた拳を打ち付けたのだ。


バキッと言う音が聞こえた。


気付けば風雪は床に倒れ込んでいて、真倫ちゃんが追い打ちをかけるように馬乗りになる。


「お前は! 自分が何をしたかわかってるのか!? それでも人間か!」


さらに何発も拳を振り下ろす。


怒りの全てをぶつけるかのように。


だけど、そんな真倫ちゃんの背後から近付く山中。


そして、真倫ちゃんの髪を掴むと、強引に後方に引っ張ったのだ。
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